渋沢栄一(しぶさわ えいいち)
成功には嫉妬が伴い、成功者の多くは老獪(ろうかい)と目されやすい。
地位と名誉には、それぞれ付随する慎みがあることを忘れてはならぬ。
人を選ぶとき、家族を大切にしている人は間違いない。仁者に敵なし。
私は人を使うときには、知恵の多い人より人情に厚い人を選んで採用している。
たとえその事業が微々たるものであろうと、自分の利益は少額であろうと、国家必要の事業を合理的に経営すれば、心は常に楽しんで仕事にあたることができる。
お前は自分の立場に忠実なのは結構だが、同時に恕、つまり相方の立場も理解してやるという広い気持ちを持たねば、世の中に円満に処していくことはできない。
有望な仕事があるが資本がなくて困るという人がいる。だが、これは愚痴でしかない。
その仕事が真に有望で、かつその人が真に信用ある人なら資金ができぬはずがない。
交際の奥の手は至誠である。理にかない調和がとれていればひとりでにうまくいく。
一個人のみ大富豪になっても社会の多数がために貧困に陥るような事業であったならばどんなものであろうか。
いかにその人が富みを積んでもその幸福は継続されないではないか。故に国家多数の富を致す方法でなければいかぬというのである。
事業には信用が第一である。
世間の信用を得るには、世間を信用することだ。個人も同じである。自分が相手を疑いながら、自分を信用せよとは虫のいい話だ。信用は実に資本であって商売繁盛の根底である。
富を成す根源は何かといえば、仁義道徳、正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。論語(義・倫理)とそろばん(利益)は両立する。