水木しげる(Mizuki Shigeru)
好きなことにのめり込み、才能が開花してどんどん伸びたとする。
でも、食べていくのは大変だ。なかなか儲かるもんじゃない。努力に見合うマネーはなかなか得られないもんです。
だからといって、絶望したり、悲観したり、愚痴をこぼしてはいけない。
ただただ、努力するのです。なにしろ、好きな道なんだから。
私が40歳を過ぎてようやく売れだした頃、手塚(治虫)さんはすでに押しも押されもせぬ漫画界の重鎮で、スーパースターだった。
だから、そのころの手塚さんは売りだしたばかりの中年漫画家のことなんかあまり意識していなかっただろう。
だが、私は手塚さんを「ライバル」だと思ってやってきた。
我が人生は半分寝ぼけたようなことの繰り返しで、パッとした出来事や思い出はあまりない。
うまい話や儲け話とも縁が薄かった。それでも、自分がつくったルールに忠実に、マイペースで生きてきた。
でこぼこ道や回り道が多かったものの、画業という好きな道を半世紀以上にわたってずっと歩いてくることができた。
その意味では、とても幸せな人生なのかもしれない。
幸福を手に入れるのは実に大変だが、しかし大切なのはその人の生き方次第というわけです。
私の職業である漫画家は、売れなければ終わりの冷酷な世界です。
なんとか売れるようになった後も、ヒット作を捻り出し、マネーを獲得しないと食っていけない。
普通の心臓ではもちません。よほど好きでないと務まりませんよ、ホントに。
天国には美しい川が流れ、薄物をまとった美女がいて、美味しそうな食べ物が溢れている。
環境が悪くなったのに目をつぶれば、まさに長い不況で暗く沈んだいまの日本こそ天国じゃないですか。
それなのに現代人たちは、悲壮な顔をしてあくせく働いています。
本気で人を幸せにしようと思ったら、自分が傷つくことくらい覚悟しなくちゃいかんのだ。
苦しむことから逃げちゃイカン。
人生はずっと苦しいんです。苦しさを知っておくと、苦しみ慣れする。これは強いですよ。
金なんか飢え死にしない程度にあったらええ。