椎名林檎
音楽っていうものは言ってしまえば母の腹の中に着床した時からだと思うんですけど。その後は、父のモーツァルト好きが高じて多分モーツァルトが多かっただろうと。
で、私が「音楽」として自覚したのはそれを否定し始めたときだと思う。
椎名林檎っていう名義は辞めますよ。もう無理。本名のあたしであることを誰も守ってくれないんだよ?
でも、そんなの当たり前じゃないですか、一個の大人だから。「自分で守んなきゃいけないんだから、辞めたっていいだろ!」とか思って。
「人生っていうのは勝手に与えられるんだから、自分が追求してもいいんだ。幸せ追求権ってあるだろう!」と思ったんですね。
急にひとりぼっちにされちゃった気持ちになったんですよね。共犯者はいっぱいいるのに、私だけが訴訟を起こされてるような。
小ちゃい頃は入院することが多くて、看護婦さんとか凄い好きなのもそうじゃないかな。
だって、生まれてすぐ大手術でしょ?すっごい病院が心地いいのかも知れない。
シンメトリーになってないと気持が悪いんですよ。
呼吸が奇数だったりすると、「急いで吸わなきゃ!」みたいな気になる。対に関してはかなり重症なので(笑)
惚れたはれたの世界じゃなくて、もっと性別を超越したもの、生命を見つめるようなもの。
ーそういう温度にまで、お客さんの器を大きく広げてさしあげることができたらいいと思ったんですよね。
『この世の限り』について